AKK かがわ
トップページ
アディクションとは
AKKかがわとは
AKKかがわの活動
お問い合せ

AKKかがわ ニューズ・レター 第74号

2017年4月1日

アデイクシヨン問惠を考えよう会。かがわ(AKK)

代表 後藤見知子

 平成29(2017)年3月4日(土)午後、たかまつミライエ6階大会議室において、AKKかがわ主催「アディクションと家族支援」とのテーマでアディクションフォーラム&講演会を開催した。
 講演は、ひろしま家族機能相談所所長の東山良子(とうやまよしこ)先生に「アディクションと家族機能・支援について〜家族という病〜」というテーマでしていただいた。シンポジウムでは、東山先生の他、香川県断酒会の古谷二三雄さんと永山日出子さんにシンポジストとして加わっていただき、レクチャーのあと、会場からの質疑に応答していただいた。
 東山先生の講演を、以下掲載する。
 
 私は最初、県の福祉事務所で生活保護家庭の家庭訪問などを担当していたのですが、「元気で生きていらっしゃいました」と上司に報告し、こっぴどく叱られたりしました。生きているかどうかではなく対象者の状態をくわしく報告することが大事だと改めて痛感しました。アルコール依存症の本人宅を家庭訪問し、「お変わりございませんか?」とたずねると、「それくらい見りゃわかるだろう、もう放っておいてくれよ」と言われ、落ちこんだりしました。アルコール依存症という病気の難しさを改めて痛感しました。
 私自身、若い頃のある時期、摂食障害で苦しんだことがあります。もう食べたくて食べたくて夫に隠れ、菓子パンなどをがつがつ食べているところを夫に見つかりました。「そんなにひとりで食べたいのか?」と夫に言われました。その時の夫の人を蔑んだような表情にゾッとしました。いまだにあの表情だけは忘れられません。
 家族というのは、おたがいに帰属文化の違う他人同士が出会い築いていきます。おたがいに自らの育った環境のものさしで相手を見ることになります。たとえば新婚当時、ヤカンの水を足すのに、夫はヤカンのふたを上げずに、ヤカンの口から水を入れていたんです。私、びっくりしましてね、ああ夫の家庭ではこういう風にヤカンに水を足してたんだと再認識しました。その中でおたがいにうまくやっていくためには、相手を否定するのではなく、情報のやりとりをして、おたがいを認めあっていくしかないじゃないですか? 私はそれをあまりしませんでした。夫も淋しかったと今ではよく理解できます。
 アルコール依存症も、そういう人間関係の病と見ることもできます。断酒会の家族会では、「口にチャック」とよく言われていますよね。口を開くと相手に刺激を与えますから、まるで腫れ物に触るように「口にチャック」と言っているのですが、私自身それは少し違うのではないかと思っています。おたがいに話し合わないと家族が成立しないじゃないですか? 複数の家族だからこそ、おたがいに支えあって営んでいくことが大事になるのではないでしょうか?
 家族は、コントロール依存、支配依存に陥っている傾向がありますので、まず自助グループでは、「私」を主語にして体験発表をしてください。「夫」や「娘」などアディクションの本人を主語には決してしないでください。家族会が緩衝帯になり本人のアディクションからは目をそらし、ひたすら自分自身を見つめてください。アディクションの本人と私とは別の人間だということが、しだいにわかってきます。家族は何も本人の保護者ではありません。アディクションの当事者であるかもしれないんです。そういう風に相手をコントロールし、支配することが、生まれ育った家庭の文化だったのかもしれません。それが世代間で連鎖していくのですね。まずその癖から脱するためにも、「私」にこだわることです。アディクションの本人とはいい加減の距離をとってください。
 「私がいなければ」とか「私がダメだから」とかは決して思わないでください。そういう共依存の人間関係、家族文化が世代間で連鎖し、次のアディクションを生み出していきます。どこまで行っても「私」は「私」なんですから、「私」を貫いてください。そういう風に「私」中心に考えられないと、家族の癖、好ましくない家族文化が進行していくことになります。
 「他人からどう見られているか」から「私は私なんだ」になってください。相手をコントロールする共依存、問題は「私」なんです。家族は複数ですが、おたがいに自立していること、特に心が自立していることが大事です。そして自らの意志で動いていくことが大事ですね。そういう「私」、自分を見つめることが生きていくことなんです。その中で自分の本音を語ることが治療になるんです。そこで家族会という自助グループなどの本音を語る場を持つことが重要です。自らの本音をまっすぐに語ることができる、そういう人間関係が非常に大切になってきますね。


編集後記

今、精神医療が大きく変わろうとしております。良い意味でも、悪い意味でも、私事として関心を持って報道関係に注目してください。なお、「アルコール健康障害対策基本法」は4月に入り、内閣府から厚生労働省に移管しました。御存知でしたか!