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アデイクションと家族支援

〜 気づき・かかわり・つなぐ 〜

日時 平成26年 12 月 6 日(土) 13:30〜16:00
場所 高松テルサ
主催 AKKかがわ

講師: 西川京子先生(新阿武山クリニック)


公演中の西川京子先生(新阿武山クリニック)

アディクションと家族支援。〜気づき、かかわり、つなぎ〜 というサブテーマを頂きまして私は本当、私が今関心を持ち。又、お伝えしたいと思っていた丁度の所だと思って。このテーマを選んで頂いたのは後藤先生だと思いますが、本当に感謝してレジメを用意させて頂きました。あのう、一時間の時間の中のお話ですので、一つ一つのアディクションについて詳しく説明させていただく時間は無理な事なんです。で、ちょっと−番最初にこんな事で皆さんに不快に感じ頂く事になるかもしれませんが。一つ一つのアデイクション、依存症についてはですねえ。今、受付の方で「知っていますか?薬物依存症」という本と、それから「知っていますか?ギャンブル依存症」という本を二冊づつ持ってきて販売しています。これを去年と今年の二月ぐらいに出版された本なんですが。一問一答なんですね。あのう、「ギャンブルをしながら嘘ばかり言います。これは性格でしょうか?」とか「ギャンブルをしては借金を作ります。困ります。どうしましょう?」とか「薬物で逮捕されました。どうしましょう? 刑務所には面会に行った方がいいんでしょうか?」というようなですねえ。病気の事、回復の事と同時に多くの家族の方が大変悩んでおられる。そういう事を一問一答として纏めた物です。あのう税金と定価から100円ぐらい割り引いた価格で販売しています。もし、薬物依存やギャンブル依存について今日関心の上でお越しくださいました方は、その一つ一つの依存症を補うのにお使い頂ければ幸せに思います。「アディクションとは何か?」って言いますとですねえ。それは自分にとっては何もプラスにもならない。それどころか大きなマイナス、大きな損失だと認識しているけど自分の行動をコントロール出来ない。これがアディクションと言われているもの。酒飲むのは駄目。自分はこんな事をしていたら人生台無しにしてしまうとか。薬物使う。こんな事とんでもない事だ。自分の人生棒にふる。いい加減にしとかないと大変な事になると。皆知ってるんです。ギャンブルで金儲け出来るとは本当は思ってないんです。止めなあかん。なんとかせなあかん。でも今日ではない。明日から止めるんだったら止めよう。こんな風に考えて自分にとって損失だと考えるけど、その依存の対象を断つ事が出来ない。これをアディクションと言います。認識と行動の解離といいます。バラバラなんですね。認識と行動とが。でえ、大体3つのアディクションに別けられています。アルコール、薬物。薬物でも覚醒剤、マリファナ、最近の危険ドラッグ、それからお医者さんが処方する処方薬、薬局で売っている市販薬、そういうものにも依存性のある薬物がありまして。こういう覚醒剤、大麻、危険ドラッグ、そして処方薬、市販薬.こういう薬物。+ニコチン、カフェイン。それから一部の食べ物。こういう物質がアディクションを引き起こしている事なんです。えー、これを物質アデイクシヨンといいます。その次に行動プロセスアディクションというのがあります。これは自分の行動が自分にとってマイナスだと解っていながら止める事が出来ない。例えばギャンブル、買い物、それから放火、窃盗、窃視(せっし)いうのは覗き見なんです。最近物凄く多い盗撮がそうなんですね。携帯電話のカメラ機能で女性達のスカートの中を撮影したなんていうのが毎日のように出ていて珍しい事ではありません。ねえ。こういう買い物、ギャンブル、放火、窃盗、窃視。それからSEX依存、こういうのを行動プロセスアディクションといいます。そして、もう一つ、この物質アディクシヨンと行動プロセスアデイクションの根底にあるのが関係アデイクションであるといいます。これはDV、虐待、共依存、恋愛、こういうのが関係アディクションに数えられるんですね。子供を虐待して凄く反省して涙ながらに子供に謝って。しかし、又翌日同じ事を繰り返される。DVもそうですけどね。「二度としないから、頼む、頼む。」っていっていながら、ほとぼりが覚めれば又同じ様に家庭内暴力になる。こういうなのも関係アディクシヨンなんですね。ただですね.WHOといって又このインフルエンザが流行る時期になるとWHOというのがよく新聞に登場します。世界保健機関といいます。世界中の人達の健康問題に取り組んでる機関なんですが、そこはですねえ、「アディクションというのは大変暖昧だから依存症としましょう」という風に言っているんです。アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症、SEX依存症というように依存症という形で名称は「依存症」にしましょうと。医学的な用語としてはねえ。そう決めてます。そして、あと関係アディクシヨンはWHOは病気として定義して無いんです。まず病気と定義するのには暖昧な部分があるんでしょうね。WHOが定義しているのは物質アディクションと行動プロセスアディクションだけなんです。このアディクションはですねえ.幾つかの共通する特徴があります。アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症に共通する特徴として一つ脳の働きの不具合でなるものですってものなんです。脳の働きの不具合って事なんです。これはどうして脳が働きに不具合が生じるか?っていうと例えばですねえ。あのう、ネズミを連れてきます。大きいネズミでも小さいネズミでも結構です。ネズミを−匹連れてきます。そのネズミをですねえ、明るい箱の中で酒を飲ますとか、覚醒剤を食べさせるとか、コカイン食べさせるとかします。でえ、ネズミっていうのは皆さんご存知の通り角もありません。牙もありません。身体も小さな弱い動物です。だから、生き延びる為に夜行性です。餌をあさったり、移動したり。暗い闇紛れて動いて、夜行性であるっていう事をもう何百万年も昔から生き延びる為に夜行性で生きて来ている。そのネズミをですねえ、明るい箱の中に入れて酒を飲ましたり、或いは覚醒剤や或いは大麻などを食べさせます。そして、そのネズミをですねえ連れて来まして何回かご馳走した後に連れて来まして。明るい箱と暗い箱とどっちへも行けるところでネズミを放します。本来、本能からいけば暗い箱へ飛び込むはずなんです、ネズミは。本能が夜行性です。しかし、明るい箱でご馳走になったネズミは真っ直ぐ明るい箱に行くんです。そこにアルコールや覚醒剤や大麻がないかと思って。我が身の危険もかえりみず飛び込むんです。という事はアルコールや覚醒剤、大麻そういう依存性のある物質はネズミの本能を変える程の影響を与えるんです。何故こんな大きな影響を与えるのかという事。そこにアルコールや覚醒剤や大麻やヘロインやコカイン、そういう物はですねえ。強烈な快感をネズミに与えるんです。それは人間が使ってもそうなんです。それは私達が日常生活の中で味わっている快感とは桁違いの快感なんです。だから、本能を変える程の大きな影響を与えるって事なんですね。これでアルコールや薬物がどうして本能を変える程の快感を脳に与えてるか?いう事をお解り頂いたかと思うんです。だから、脳はその快感を知ってしまっているから、だからその快感を求めて酒を飲み続ける、薬物を使い続けるという事が出て来るんですねえ。では次にギャンブルについて見てみましょう。ギャンブルはですねえ、ギャンブルをしている時、人間の脳にはある部位が異常な快感を感じてるんです。どうも何かの物質が出ていて、その物質が脳に快感を味あわせているんだと言われているんです。でえ、又ネズミを連れてきます。で、そのネズミにですねえ人間がギャンブルをすると強烈な快感を感じてるある部位と同じ部位に電極をセットします。電極というのは皆さん+から−、−から+へ電気は流れますねえ。電極の一つをネズミの脳のある部位にセットするんです。そしてそのもう一つの電極の端っこにペダルを付けるんです。そしてそのネズミを籠に入れてペダルでピツピツ、ピッピッと電気刺激を脳に与えるんでずですねえ。ギャンブルすると快感を感じる脳の部位に電気刺激を与えるんですねえ。これを何回か体験したネズミはですねえ、籠の中にその電極を埋め込んでペダルを繋いで籠の中にネズミを入れておく。ネズミは餌も食べずに、水も飲まずにひたすらペダルを踏み続けるんです。食欲なんていうこれはまさに本能ですねえ。喉が渇けば水を飲む。これも本能です。それさえ忘れてペダルを踏み続けるという事なんです。でえ、よくギャンブルをなさる方がおっしゃいますね。パチンコ屋に入ったら、缶コーヒーとタバコで十時間でも十二時間でもパチンコ台の前に座りっぱなしや。昼御飯なんて食べようとも思わんかつたって話がありますねえ。でえ、では今度赤ちゃんを産んで間もないネズミを連れてきます。そしてさっきと同じ様にギャンブルをすると快感を感じる脳の部位に電極をセットしてもう一つの端っこをペダルに結び付けます。そして、ピッピッ、ピッピッ電流を流して脳を刺激します。何回かそれを体験したネズミはですねえ、お母さんネズミは周りに赤ちゃんを置いておいても、赤ちゃんにおっぱいを飲まさず、世話もしないで。ネズミなんてどんな世話するのか解りませんけどねえ(笑)オムツもありませんので…赤ちゃんの世話もしないでひたすらペダルを踏み続けるんです。母性が本能なのかどうなのか、色々議論があるかもしれない。でも、これ夏場になるといつも新聞記事に出ますよねえ。赤ちゃんを駐車場の車の中のチャイルドシートに座らせて、パチンコ屋にお母さん入りました。五時間経って出てきたら赤ちゃん熱射病で死んでました。こういう記事が夏場になったら何回でも。最近ではパチンコ屋さんもちゃんと保育室を造っています。「ご安心下さい。赤ちゃんこちらで預かりします。お世話してますから、どうぞごゆっくり。」パチンコ屋さんそう書いてるそうなんです。ただ、ネズミはですねえ、もう赤ちゃんの世話することなくひたすら電流から得る快感を追い求める。その様にギャンブルも又桁違いの快感を動物に与える。人間に与えてる。その結果、ギャンブルも中々止められない。そういう病気なんですねえ。この様に脳が強烈な快感を知ってしまったという事が一つの大きな要因になってます。その事もあってコントロールが効かなくなるようになるわけですねえ。強烈なそういう快感への欲求っていうのが出て来るからコントロールが効かずに又それを欲しいと思った時に得られないと非常に不快な心身の状態になる。ね、脳の機能不全でコントロール障害が出て来ます。この事で止める事が出来んのです。飲酒でも、薬物でも、ギャンブルでもね。節度の使った楽しみ方が出来なくなる。この事が病気の特徴です。進行性の慢性の病気です。何年酒を止めても、何年薬物止めてても又使えばあっという間に元通りのコントロールの効かない使い方しか出来なくなります。もう一度快感を知ってしまった。コントロールする事をできなくなった脳を何年止めようとそれは修繕が効かないんです。修理が効かないので5年止めても10年止めてもまた吸えばいずれトコトンやってしまうという、こういう変化が起きるんですね。でえ、ただそういう意味で脳の働きが修繕は出来はしませんが。それを完全に止めさえすれば社会生活には支障は出なくなる。お酒を節度を守って飲む事は出来ないけど、これはもう一度病気になったら傷害出来ないけど、止める生活を続けてたら普通の生活には支障が無い。ギャンブルもそうなんです。この様に慢性の進行性の病気です。そして、このアルコール依存もギャンブル依存も薬物依存もですねえ共通して言える事は−時性の病気ですって事です。これは先程申し上げたように脳の働きに不具合が起きて、コントロール出来なくなっている事が病気の主な要因で性格だとか人間性だとかストレスが関係してなった病気ではないって事なんです。性格的に弱かったから、人間としての人間性の問題があったから.或いは大変なストレスが掛かったからアルコール依存になった、薬物依存になった、ギャンブル依存になった、いう事では無いって事なんです。これはアルコールや薬物やギャンブルが解らず強烈な桁違いの快感を知ってしまって脳がコントロールする力を失ったという事。この事が一番大きな原因になります。そして、もう一つの特徴として、この病気は病気になった人だけの問題では済まない。非常に周りを巻き込んでいく病気です。これはまず解る事です。妻や子供や親御さん、兄弟達、大変巻き込んでいきます。それも何年にも渡って巻き込んでいきます。でえ、大体薬物依存になっている方の治療を受けたり、止める事に取り組み始めるのは30歳前後なんです。薬物・使い始めて大体10年から15年は経っているんです。ギャンブルで治療を受け始める方の平均的な年齢は40歳前後。ギャンブル始めて20年経ったぐらい。お酒においては大体50歳前後なんです。酒飲み出してからどんなに短くっても30年は飲んで来てるんです。その間、家族は巻き込まれ続けているんです。本当に家族の状態というのは大変なものです。良く言われます。幼少の人が一人いると。その人の傍には少なくても3人。大体5人は「もういっそ死んだ方がマシや。」と思ってる人がいるっていうんです。「いっそ死にたい」と思っている人がいるんです。それが配偶者であり、子供達であり、親達である。或いは兄弟達であったりするんです。本当に家族の人達は巻き込まれて本当に大変な苦難を5年10年15年生きて来てます。しかし、これが又大変情けない事なんですが。飲んでいる人、酒を飲んでいる人、薬物使ってる人、ギャンブルしている人もその依存対象に心が全く囚われているんです。だから、周囲を巻き込んで、周囲が疲労困憾するほど悩んで苦しんでてもですねえ、それが本人にはあんまり伝わって無いんです。じゃあ、止め始めたらそれは解って来るか?止め始めてもそれを本人が気付くのにはかなり長い時間要します。ご本人は酒やま始めたけど、過去の事、過去の自分に不都合な事いうのは中々思い出せない時期いうのがまあ2、3年続くんですねえ。色々あったけど、何があったんかよう思い出せない、みたいな時期がかなりあります。だから、家族は苦労するだけでなくその苦労がご本人に解って貰えないというこの歯痒さいうのが同時に又悩んで苦しむんですねえ。では、家族はどんな状態になるんでしょうか?っていう事ですが。依存症の家族っていうのはまず病気と知りません。多くの方は、「こんなに酷い飲み方どうしてだろう?と他に人は普通に酒を飲んでいるのにうちの人だけ何でこんな酷い飲みよう。」と思いながらもそれが病気でなっているからだいう事中々解りません。でえ、やっぱし、世間一般に中々病気だと理解されていませんから、あのう家族がそうであったとしても不思議ではないんですよね。薬物の場合もそうです。家族はもう大変悩んで苦しんで「何でこんな法律に反する薬を使うのよ。犯罪者じゃないか。もう世間に顔向けも出来ない。誰かに知られたらどうなるの。」という様な思い出ですねえ、もう家族は本当に泣いて苦しんでます。それが依存症という病気になっててこうなんだ、という事が中々解りません。今、ギャンブルがアルコールより薬物より更に遅れて出発してるのがギャンブルなんで。今、全国に530万人のギャンブル依存の人がいると言われています。これはアルコール依存の人達の倍の人数です。成人人口の3%というのがギャンブル依存症の人の平均的な発病率なんです。世界平均が成人人口の3%なんです。というのは、日本では大体250万人位に3%はなるんです。でも、何と日本は5.8%という数字が先日厚生省から出てました。日本には大体6%の人がギャンブル依存症に…世界の倍なんです。日本のギャンブルの発症率はね。何でこんな現象が日本で見られるのかというと、ギャンブルマシン、パチンコ、スロット、ゲームなどですねえ。全世界のギャンブルマシンの60%が日本にあるんです、皆さん。そういえば街角、街角にパチンコ屋さんありますもんねえ。その結果が580万人という推定人数なんです。でも、ギャンブル依存という病気があって、回復可能だというご存知のご家族は少ないんです。「何でこんな事になるんやろう。何度言っても繰り返す。」っていう状態ですねえ。でえ、この様に家族とすれば性格や人間性によってこんな問題が起きていると思うから病気で病人だとは思いません。めっちゃ腹が立ちますよねえ。怒りますし、恨みますしねえ。憎しみも湧きます。どんどん患者さんと家族の関係が悪い。悪くなります。そして家族は長年に渡って日夜ストレスを体験してます。もう電話が鳴るとびくびくする。救急車が走ると我が家ではないかと。パトカーが走るとあの子が…と思って夜も昼も物凄い家族のストレスの状態の中にあります。この様な家族に対して社会はどうか?というと社会はね「家族が何とか…他人や社会に迷惑掛けんようにすべきだ。」と社会は思っているんです。大人も立派な大人がしてる行動なんで家族によってどうこう出来る事では無いという事を中々皆さん思ってはくれません。「親付いてるんやろう。何しとんや。嫁さん何しとんや。」っていう事になるんです。そういう社会の風当たりを感じますから、家族は一所懸命後始末して、一所懸命変わって責任とって解決するんです。社会からの非難をかわす為にね。それをすればするほど本人は自分が依存症で何事起こしてるか見えなくなってしまっているんですねえ。そして、家族はこんな生活が10年も15年も続く。皆孤立していきます。もう社会に出て行くのが怖い。恥ずかしい。惨めだ。こういう思いの中で家族は家族だけで固まって暮らしている。隣近所にも、親戚付き合いも避けている。こういう状態に陥っています。そしてこういう家族を支援してくれる社会支援っていうのは非常に少ないんです。今、アルコールはやっと色んな専門家がやっと力をつけて支援してくれます。でも、薬物やギャンブルに関しては専門職も本当に力不足です。思い切って色んな不安を抱えながら専門職に相談しても、これという返事が得られなくってがっかりするなんていう事が大いに現状にあります。とても家族はこんな状況の中で苦しんでいます。しかし、放っておく事が出来ずに夢中になって取り組んでいるんですが。やればやるほど空回りして。ちっとも酒も止めない、ギャンブルも止めない、薬も止めない、疲労困艤しています。その家族にとってとても必要なのがこの気付きなんですねえ。これはですねえ、あのうもう35年位前になりますが、アメリカやヨーロッパでアルコールの家族研究っていうのがかなり熱心に行われました。これは家族システム論という理論に基づいた研究だったんです。そこで1つ明らかになった事があります。アルコールも薬物もギャンブルも長年悩んで苦しんでいるけれども、ちっとも問題は解決していません。どうしてでしょうか?いう事になったんです。そして明らかになった事は家族の努力が足りないわけではありませんという事が明らかになりました。家族は努力してます。大変努力してます。しかし、問題は解決していません。何故でしょうか?これは家族が問題解決と判断している常識的な判断とそれに基づく常識的な対処が実は問題を持続させている。問題を継続させているんだっていう事なんです。家族の常識的な判断と常識的な対処を逆転させないと問題は解決しませんという事が解ったんです。では、この常識的な判断として常識的な対処として依存症の家族は、アディクションの家族はどの様であったのか?という事。家族は色々、色々頼んで来ました。会社の上司にも頼みました。昔の本人が尊敬している中学校の先生にも頼みました。幼馴染の友達にも頼みました。「あの子に何とか薬物止めるように言うて聞かせて欲しい。」と「あの人の酒を控える様に言うて欲しい。」とか。でも、誰に言って貰ってもガンとして本人は止まりません。その結果家族は結局は家族が何とかコントロールして止めさせるしかないと判断してるんです。それはまあ常識的な判断なんですねえ。当然なんです。どこを頼っても助けて貰えるわけでは無いとすれば何とか止めさせるのは家族が頑張るしかないと思っている訳なんです。そしてその判断に基づいて何をしてるか?っていうと。目を光らせて監視して。そして干渉して世話を焼いて何とか親の思い通りに。或いは配偶者の思い通りにコントロールしようとしている訳なんです。止めさせよう、控えさせよう、一所懸命している訳なんです。でも、それをしてもしても問題解決にならないんですねえ。干渉して、世話を焼いて、コントロールを試みても。本人は「子ども扱いしやがって。こんなから家に居られんねん。僕の事はちっとも解ってくれへんねん。」みたいな事で外へ外へと皆出て行って、又使います。飲みます。します。そして、そんな中で問題を起こします。問題を起こすと家族は「人さんには迷惑はかけられん。社会には迷惑はかけられん。世間体もある。」といって大きな問題を代わって後始末して、代わって解決して.代わって責任を取ります。本人は素面になってるんなら、本人が防ぎ切れて見たら、本人がちょっとほとぼり覚めてみたら、なんと借金は綺麗に片付いて。暴れたいうけど綺麗に跡形もなくなって。割れたガラスにはボール紙まで貼ってある。ね。警察に保護されても、ちゃんと家族が迎えに来てくれて、ちゃんと我が家のベッドで寝てた、みたいな事なんですよ。ね。だから、本人にすれば翌日後始末して責任を取ってくれた家族は頭に来てますよねえ。「夕べ何事だったと思うの。もういい加減にしてよ、あなた。もう迷惑はほどほど懲りたわ。」何て言って家族は本人を責めます。本人は「大げさな事言いやがって。頼みもせんのに後始末しやがった上に恩着せがましく言いやがって。」みたいな事でねえ。全然すれ違ってるんです。ねえ。こういう家族が一所懸命してくれる事、空回りしている。結局、家族の力でコントロールして止めさせようとする事が結果として本人を子供扱いして責任を取れない人として家族が全部変わって責任を取り、代わって解決している。その上で家族の怒りや恨みをぶつける。本人は益々孤独な思いの中で酒を飲み、薬物を使い、ギャンブルをする方に走ります。こういう悪循環が回ってるんです。これを気付いていく事が大事なんですねえ。これをアディクション維持連鎖、依存症維持連鎖と言います。そして、今度気付いたところで関わりを変える必要があります。どう変えるか?常識的な判断と常識的な対応を変える必要がある。では、どう変えるか。まず、家族にはコントロールして止めさせる力はない。これを認める事。これまでこれだけ一所懸命やったのに効果なかったという事。家族にはコントロールして止めさせる事は出来ない。依存症とはそういう、アディクションとはそういう病気なんです。アルコールでも薬物でもギャンブルでも誰かが本人をコントロールして止めさせる事は出来ないんです。これは家族だけではありません。主治医も自助グループの仲間もコントロールして止めさせる事は出来ない。では、どうやれば止めるの?っていう事になりますね。実は依存症の本には死ぬほど、一方では死ぬほど止めたい。この両極端の間を揺れ動いているんです。こんな事しとれんよ。自分で自分の首を絞めてるようなもの。何とか止めて立直らなあかんという思いと、片一方で止める事は出来ん。これ無しで生きる事なんで到底出来ん。この思いの中で揺れ動いているって事なんです。ただ、皆さんねえ、止めて立直りたい。止めなあかんという気持ちは本人の中にあるんだっていう事。これが一番大きな事なんです。この止めて立直りたい、このまま一生続けられる訳では無いというこの力を自然治癒力、回復力、復元力と呼びます。復元力、RESILIENCE(リジリエンス)と英語では言います。こういう力は人間の中にはあるんだ。私達お医者さんからもこれまでも聞いてましたよね。医者は病気を治すんではない。患者自身が持っている自然治癒力を医者はサポートして大きく強めていく事を通し、病気が治っていくんだ。アルコール依存も、薬物依存も、ギャンブル依存も、やっぱし患者さん自身が自然治癒力を持っている。復元力を持っているんだという事なんですね。復元力というのは物理の病気なんです。良く知られているのが船がですね大波被ってね転覆しそうになった時に周りが浮かび上がって又波間をスイスイ進む力。これを復元力っていうんですねえ。でえ、これは船は設計段階で復元力っていうのが含まれているんです。でも、人間も神様が、仏様かが、そういう力を根源的に持って生まれるようにしてくれているんだろうと思います。今年6月位にNHKのクローズアップ現代でですねえ、このリジリエンスが取り上げられてました。NHKでは逆境力と呼んでました。逆境を生き延びる力。東北の大震災で大津波によってすべてを失った人達がわずか1、2年の間これだけ復興に向かって生き直しをやってらっしやる。この力、罪を犯した人が更正しようとする力、病気の人が回復しようとする力、倒産した人が再建しようとする力、レイプにあった人が自分を立て直していく力、こういうものを逆境力と呼んでました。ね。この様な力は一人一人の中にあるんだ。その事を信じてそういう力を持つ回復の主体者として尊重していくっていう事。病気になった人に信頼と尊重という事を払っていく。もう一つ、人はたとえ病気であったとしても大人としての責任を持つんだって事なんです。自分の言葉や行動に責任を持つっていう事。依存症の結果、色んな問題を起こした時誰かが代わって後始末して代わって、本人も無責任にしてはいけません。本人も責任主体として個人責任という事を大事に置いていくって事。その事が新しい対処として必要なんです。関わりを変えていく必要があるんです。これまでのように家族がコントロールするのではなく。回復の主人公は本人さんなんだと。その思いの中で信頼と尊重という事をしながら、本人に自分の言動に責任を取って貰うという関わりをしていくっていう事。これが関わりの変化になっていく訳ですねえ。では、その次ですが。こういう対応をですねえ、家族がしていく為には何が必要かというと一つはやっぱしアディクションの家族にキッチリ関わって下さる専門職がいります。保健所や精神福祉センターや医療機関や相談機関などでちゃんと対応して下さる。ギャンブルでも、薬物でもね。して下さるそういう専門職がキッチリカを持って新しい関わりを、新しい対応を家族が実行できるようにサポートとしていただく事が必要です。家族も何しろね10年も20年も長ければ30年も必死で組み合って来てますから身に付いてるんですね。だから、中々新しいやり方は難しいんです。家族教室、或いは相談会とか家族会とかそういう所に。それから、ナラノンとかアラノンとか、断酒会とか、ギャマノンとかそういう所に出て家族自身が同じ家族の中で勉強し、又力をつけて行かないといけませんですねえ。そして、家族は同じ立場の家族の人達と交流して孤独から抜け出て適切な対処をできる力を付けると同時にですねえ。家族もかなり認知が歪んで来てますから、長年の間にね。ご本人に対する認知の歪みです。酒を飲む人に対して、ギャンブルをする人に対して、薬物使う人に対して、家族はもう大変な嫌悪感を持っています。あの人が生きてるばっかつしに皆が迷惑やという様な時代さえもありましたものね。だから、認知も歪んで来てます。家族はその認知を修正していく必要があります。家族自身も自己中心的になったり、マイナス思考になったり、或いはあらねばならない、こうあらねばならない、こうすべきだ、ああすべきだ、自分や人を雁字搦めに縛ってしまう様なこんな所もありました。これを家族も変えていく必要があります。家族の被害感と自己憐燗(れんびん:[意]かわいそうに思うこと。あわれむこと。あわれみ。)、認知の偏りを修正するって事。これ家族にとって必要な事なんですねえ。その為に家族がもう一つすべき事はご本人さん達の生の声を聞く事です。断酒会は幸いにも家族とご本人が一緒に参加してますので、参加すれば酒を飲んで来た方の話を聞く事が出来ます。でも、GAやギャマノン、NAやナラノン、アルコールやギャンブルや薬物の場合にはそれぞれグループが別個です。家族とご本人とね。家族が家族同士で解るだけでないく、ご本人の生の声を聞いて本人への理解を深める事が必要です。病気だったんだ。病人だったんだ。本人も苦しんでたんだ。こういう生の声を聞く中で殻で硬くなってた家族の感情が少しづつ柔らかさを取り戻していく事が出来るんですね。これが関わりの心です。その柔らかさを取り戻した所で最後に繋ぐなんです。皆さんアディクションは大変ある意味難しい病気です。本当はね、アディクションの回復っていうのは癌よりも死亡率が高いと言われているんです。アルコールだったら大体35%から40%の回復に繋げる。…だから決してね簡単な病気ではありません。癌よりももっと死亡率の高い難しい病気です。でも、この難しい病気、何が回復のエネルギーになるか?それは人との繋がりなんです。人との繋がりの中でご本人が自分の眼を向き合い。自分の物として受け入れて向き合って取り組んで回復を目指そうとするっていう。これは人との繋がりなんです。人との繋がり、、誰との繋がり、−つは家族との繋がりです。家族と本人との関係は愛情が愛情として伝わらないような関係に陥ってました。本人も、家族も、お互い背を向けあってました。一つは家族の絆。家族との繋がりを取り戻す。二つ目も断酒会、A.A、GA、など同じ立場の依存症から立ち直りたいと思っているご本人さん達の仲間の絆なんです。中々、酒飲んで来た人は酒をあまり飲まない人から中々理解して貰えませんし。中々止めたと言っても信頼して貰えません。ギャンブル止めたと言っても、これまで被害を受けていた家族も周りも中々信用してくれません。でも、仲間だったらお互い自分達がどれだけ嘘吐きで、どれだけ借金したのかを共有しながら支え合って正直に生きるっていう事を共に目指す事が出来ます。仲間の絆を造るっていう事。もう一つが専門職との絆。中々、家族との絆を取り戻すのにも時間が掛かります。でも、専門職は病気として病人として、そしてサポートしてくれます。そういう暖かいサポート、温かい期待、そういうものが又ご本人を力付けるんですねえ。ではですねえ、あのうこの繋がりを造るのに何が大事かつて言いますとコミュニケーションなんです。少しコミュニケーションについてお話しましょう。…皆さん、コミュニケーションとはラテン語が語源です。コミュニケーションは英語の辞書を引くと伝達するとか、伝えるなんていう様な素っ気無いあれです。どういう事が語源になってるか?というと「分かち合う。共通の物を持つ。」これが語源なんです。二人の間で分かち合う。分け分けする。共通の物を持つこれが語源なんです。これは二人が一つになる。通じ合う。そして心が触れ合う、という様な血の通った関係性を目指すのがコミュニケーションなんです。コミュニケーションが目指しているのは血の通った暖かい関係なんです。では、コミュニケーションの失敗の原因っていうのがあります。皆さんが一番コミュニケーションを配慮している人との間で、この失敗の原因が当てはまるかどうか?皆さん耳を澄まして聞いて下さい。そしてねえ、もしこの中で−つ二つでも変えていこうと思って下さい。まず、先に先にと口を出し過ぎる。言葉が多すぎる。貴方の言葉がねえ。三つ目、正しい事を言い過ぎる。正論を言うっていう事なんですねえ。正論っていうのは言う方は気持ちが良いものなんです。聞かされる方はうんざりと言うんですねえ。答えを出し過ぎる。貴方が答えを出し過ぎる。相手のアラが見えすぎる。先回りして考え過ぎる。感情的になりすぎる。起きてもいない事を怖れすぎる。あれこれとりこし苦労をしてという事なんですねえ。事実を相手にきちんと見せない。まあ、こういうので思いあたる事があれば、右っ側に書いてる「コミュニケーションの成功の秘訣」の方に皆さんのコミュニケーションのパターンを変えて下さい。先に先に口を出さずに後出しにする。相手が充分話すのを待ってあなたが後の方から発言する。相手よりも口数を少なくする。その次、正しい事を言われても人は変わらないと悟りましょう。答えを出すのはいつも相手です。貴方が答えを出して押し付けるもんではありません。そして相手のアラは見えても仕方ないけど、慎重に指摘するのは慎重に。その次、先回りして考え過ぎない。そして、いつも「相手は感情的、私は理性的」と言い聞かせましょう。それから、事が起きてから動き出せばいいのでしょう。そして相手に事実を見せるようにしましょう。代わったり、責任取ったりしないで相手にちゃんと事実を見て貰って「貴方がした事悪いけど、責任取ってねえ。貴方が何とかしてねえ。」というようにしましょう。そして大事な話を素面の時に落ち着いてから…このような事をコミュニケーションの失敗と成功という事でお話しました。では、最後の所はちょっと省きます。どうも時間が15分も長引きました。今日は失礼いたしました。(拍手)


会場の様子


AKKかがわ 後藤見知子先生


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