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AKK ニューズ・レター 第70号

2014年2月1日

アデイクシヨン問惠を考えよう会。かがわ(AKK)

代表 後藤見知子
 
 平成25年12月7日(士)、高松市の高松テルサにおいて、新阿武山クリニックPSWの西川京子先生の講演会がありました。テーマは「アディクションと家族支援」。
 アディクションとは、認識と行動の乖離(かいり)と理解することができます。
 頭では、自分にとって利益にならない、というより損失になるということがわかっていながら、行動の面では強迫的にとらわれて、コントロールすることができない、抑制することができない、これをアディクションといいます。
 アルコール依存症の場合、こんなに飲んでいたのではダメだ、何とかしなければいけない、このままでは破滅と、頭ではわかっているのに、どうしても飲まずにはいられない。ギャンブル依存も同様です。ギャンブルで金持ちになった人なんて誰もいない、ギャンブル続けていれば、そのうち身を滅ぼすことはわかっている。だがギャンブルという行動を自分でコントロールすることができず、とことんまでいってしまう。薬物も同様、一生無事に終われるとは思っていない、何とかまともにならないといけない、だが止めようと思っても、どうしても止められない。
 ある母親、台所でごはんを作っていたら、息子がトイレのなかで泣いているのが聞こえてくる。自室に戻った息子に母親が「どうして泣いているの?」とたずねると、「僕は生きているのがうらめしい、僕のような人間を生んでくれてうらめしい、家族を苦しめ、親戚にも迷惑をかけ、生きている自分がうらめしい、僕が死んだら、家族にも親戚にも僕が詫びを言っていたと伝えてほしい」と言ったそうです。
 当事者も自責の念を感じている、止めないけないということはわかっている、止めるだけで解決するのはわかっている、だがそう簡単ではないのがアディクションといえます。物質アディクションは、アルコール、覚醒剤、シンナー、マリファナ、薬物、タバコ、カフェイン、食べ物(摂食障害)があげられます。プロセス(行動)アデクションは、ギャンブル、セックス、放火、窃視(のぞき見)、買い物、ネット依存などがあり、行動制御の障害といわれます。物質とプロセスアディクションの基盤にあるのが、関係アディクションといえます。人間関係に強迫的にとらわれており、共依存、DV、虐待、恋愛依存症があげられます。この関係アディクションは、病気とは定義されてません。物質と行動アディクションはWHO(世界保健機構)でも、病気と定義されています。それでは医師はどのような基準、目安で病気と診断しているのでしょうか?
 WHOの診断基準(ICD)、過去1年間で1カ月だけ、次の6項目のうち3項目当てはまれば、診断となります。
 ①渇望。欲しいと思ったら、何が何でも手に入れないと気がすまない。
 ある女性、妊娠中で覚醒剤使ったら胎児にも影響があり、両親からも「お前も大事だし孫も大事だから、今度覚醒剤使ったら警察へ通報する」と言われ、出産まで覚醒剤を使わずにこぎつけた。出産後、覚醒剤使ったらすぐわかるんです。赤ん坊に母乳を飲ませていると、使っていない。ただ使っていると人工乳を飲ませている。夜中に夫が夜勤で出勤したあと、2時頃になって使いたくて使いたくてたまらなくなった。そして赤ん坊を放っておいて、交通通事故で運転免許を取り上げられていて無免許にもかかわらず、神戸から大阪まで覚醒剤を買いに走っているんです
 ②コントロールの障害。ほどほどに飲もうと決めて飲みはじめるのに、結局とことんまで飲まないと気がすまない。ギャンブルでも、ほどほどで止まらない、結局サラ金に借金してでもギャンブルを続けている.
 ③耐性の強化。度数の高い酒に移行する。飲酒量が増える。飲酒の機会が増える。
 ④離脱症状の出現。幻覚、妄想、身体の震えなど、血液中の薬物の濃度が下がってしまうと、不機嫌な症状が出てくる。ただ覚醒剤とシンナーの場合、薬物の効き目として幻覚や妄想が出てくる。
 ⑤アルコール、薬物、ギャンブルが生活の中心になってくる.家族との団らん、友人や同僚とのつきあいなど、アディクシヨンの対象物以外に関心が薄れてくる。
 ⑥アルコール、薬物、ギャンブルなどアディクションの対象物が、不利益を招くことがわかっていながら、続けてしまう。病気、退職、離婚、逮捕されて実刑など不利益を知り  ながら、続けてしまう。
 ギャンブルの場合、地元の精神保健福祉センターでギャンブル依存の教室を初めて7〜8年くらいになるのですが、私自身、どのように対応していいのか勉強しなければならないと思いまして、資料を求めるのですが、こちらの求めに応じてくれる本が、ギャンブルの場合、極めて少ないのです。だから自ら「知っていますか?ギャンブル依存、l問l答」という本を書いてみました。診断基準では、次の10項目のうち5項目当てはまれば診断となります。3項目で黄信号です。
 ①ギャンブルにとらわれている。仕事中にも今日はどのあたりのパチンコ台に座ろうかと考えている。資金をどうしようかと常に考えている。
 ②しだいにかけ金が増えてくる。
 ③止めようとしても、続かない。
 ④ギャンブルを止めようとしても、イライラとして何も手につかない。とりあえずしないことにして、見るだけと思っていても、結局してしまう。
 ⑤いやな気分、憂うつな気分から逃れるために、ギャンブルをしてしまう。
 ⑥ギャンブルですった金を、ギャンブルで取り戻そうとする。
 ⑦うそをつく。ギャンブルにうそと借金はつきもの、そして失除する。ある男性、失踪して家族が捜索したら、隣の県のパチンコ屋で住みこみで働いていた。
 ⑧行き詰まると犯罪になる。窃盗、偽造、詐欺、横領など。ある刑務所、初犯の15%がギャンブル依存といわれている。他に自殺、失踪、離婚、退職、絶縁、借金、退学。特に学生でハマリ、学生ローンを利用する人が多い。高学歴化。
 ⑨ギャンブルのために、人間関係、仕事、学業などが損なわれる。
 ⑩他人の財布を当てにする。
 1970年代の後半、家族システム論の研究が盛んにされており、アルコール依存症の家族に光が当てられました。アルコール依存の当事者がアルコール問題を抱えながら解決や回復できないのは、家族の努力が足りないのではなく、家族の常識的な対応が問題を維持させていることがわかりました。これをアルコール問題維持連鎖、薬物問題維持連鎖、ギャンブル問題維持連鎖といえると思います。今、この判断と対応と逆転させなければいけないと盛んにいわれています。
 アディクション問題の家族は、他人を頼りにしていても仕方がない、家族の力で止めさせる、家族の力でコントロールする、監視、干渉、世話焼きをして、コントロールできると思っている。しかし当事者はアディクションを止めずに、問題を続けていく。
 他人や社会に迷惑をかけられない、世間体もあるので、家族が一生懸命後始末をして、当事者に代わって問題解決をして、責任をとってきた。その上で家族は、当事者に怒り、うらみ、被害者意識をぶつけてきた。ただすべて悪循環になっている。
 ここで、判断と対応とを逆転させてみる。
 アディクションは、誰かがコントロールできるものでもないし、止めさせられるものでもない。止めさせる力は、家族、医師、仲間にもない。当事者のなかの、何とか立ち直りまともに生きたいという力、死ぬほどしたいけれども死ぬほど止めたいとも思っている。その当事者のなかにある回復力、自己治癒力、復元力、それこそが大事とされています。
 それを高めるため、強めるためには、周囲はどうしなければならないかが、今問われているのです。これまで干渉、コントロール、世話焼きをして、思いどおりにしようとしてきたことは、相手をl人前の人として尊重していなかったのではないでしょうか?後始末をして、代わって解決して、代わって責任をとってきたということは、相手を半人前扱いしかしていなかったのではないでしょうか?相手もl人前の年齢相応のプライドを持ち、ちゃんと考えて、いろいろと感じている。だから相手を尊重して、信頼して、ちゃんと責任をとってもらう、これが逆転の発想なんです。
 問題を維持する連鎖を断ち切ること、イネーブリングを止めること、このために家族に必要なことは、まず専門家の援助を受けることです。家族はそれこそ何十年にわたり必死でやってきてますので、新しいことを始めるのが困難です。だから同じパターンをくりかえします。だから専門家の援助を受ける必要があるのです。さらにナラノン、アラノン、ギヤマノンなど、家族の自助グループに通う、これが最も大事です。自助グループに行っていないと、なかなか変われません。自助グループには、それこそ何十年にもわたる歴史や回復のためのノウハウがありますので、とても頼りになります。
 断酒会などは、当事者と家族が一緒にやってますので、家族の考え方のバランスが取りやすいと思います。家族の自助グループだけ通うのでは不十分で、やはりAA、NA、GAなどのオープンミーティングにも通い、当事者の体験談を聞くことも大事です。家族だけのグループに通ってますと、どうしても被害者意識から抜け出せないです。私は被害者で、相手が加害者という構図からなかなか抜け出せない、だから家族も当事者の体験談を聞く必要があるのです。家族もさんざん苦しんできたが、当事者も苦しかったんだ、この点を理解することが大事だと思います。
 次に、家族は、新しい自立した生き方を目指すことが必要だと思います。いつまでも過去にとらわれていては、人生もったいないと思います。家族自身、なかなか苦労に対する思いから抜け出せないでいます。過度に自己を正当化して、一生懸命協力してきたおかげで当事者は回復した、我が家が崩壊しないですんだのは自分のおかげと思っているのではないでしょうか?家族も過去にとらわれていると、回復に偏りやひずみがでてきて、バランスを失ってしまいます。家族自身、バランスのいい回復、生き方が必要ですね。
 家族の再起と新生、これこそが家族にとって必要なことです。当事者の幸せ、これはもちろん必要なことですが、むしろ長年苦労してきた家族が変わること、長年の苦労を逆に糧として、人として成長、成熟、豊かになっていく、これこそが真に家族に求められることだと思います。


−−−−-※今後の予定−−−−-
日時 平成26年3月8日(土)14時半〜16時
場所 高松市 高松市男女共同参画センター
レクチヤー テーマ「アディクションとうつ病、躁うつ病」
講師 精神科医 小笠原一能先生

※アデイクションに関心をお持ちの方、ぜひご参加ください。(参加費300円)